ストーリー
STORY
大阪・生野区生まれ、在日コリアンのオモニ(母)。
2009年にアボジ(父)が亡くなってからは大阪でずっと一人暮らしだ。
ある夏の日、朝から台所に立ったオモニは、高麗人参とたっぷりのニンニクを詰め込んだ丸鶏をじっくり煮込む。
それは、ヨンヒとの結婚の挨拶にやって来るカオルさんにふるまうためのスープだった。
新しい家族に伝えたレシピ。突然打ち明けた「済州4・3事件」の壮絶な悲劇。
アルツハイマーでしだいに記憶を失なっていく母を、ヨンヒは70年ぶりに春の済州島へ連れていくー
コメント
COMMENT
彼女の作品たちは、単純に、ある個人についての映画ではありません。普通は対立すると思われる二つのカテゴリーの関係について問い続ける映画です。その目録はとても長い。個人と家族、個人と国家、韓国と北朝鮮、韓国と日本、資本主義と共産主義、島と陸、女と男、母と父、親と子、新世代と旧世代、21世紀と20世紀、感情と思想、そして何よりもスープとイデオロギー。
ヤン ヨンヒの母親、この老いた女性一人の顔を見つめながら、私たちはこれらすべてについて省察することができます。映画『スープとイデオロギー』は、ヤン ヨンヒのこれまでの作品のように、私たちがいつまでも噛み締めなければいけない思考の種を与えてくれます。ヤン ヨンヒは引き続き煮詰め搾り出し、私たちはこれからも噛み締めなければなりません。
パク・チャヌク 映画監督
一人ひとりがその中に溶けているのか、一人ひとりの中にその器があるのか。
どちらであるにせよ、このスープを大切に飲んで、飲んだことを記憶しよう。
斎藤真理子 翻訳家
ヤン・イクチュン 俳優・映画監督
涙はヤンさんをより強くする。
その涙の後にどんな作品が生まれるのか、心の中で応援しながら待つことにします。
「家族の笑顔を見たい」。その一心で料理を作り続ける母たちの願いが叶えられる世界でありますように…。
宮崎美子俳優
「もう忘れてもいいよ」と言えるほど、オモニの、人々の背負ってきた歴史を、私は知らなかった。
そして、「知らなかった」で終わらせたくない。
安田菜津紀 認定NPO法人Dialogue for People 副代表/フォトジャーナリスト
末井昭 エッセイスト
父と母は、旧満州からの引揚者だった。姉と兄は残留孤児になる可能性があった。
小学3年の時、父と母は離婚し新しい母が来た。
その育ての母は、ヨンヒのオモニ同様に今は認知症だ。
どんな家族にも、歴史がある。ドラマがある。日常がある。非日常がある。
ヨンヒの作品を観ると、自分の家族を思い出す。
喰始 ワハハ本舗 作・演出家
真夏の大阪にスーツを着て、汗をかきながら現れた彼は、オモニ(母)が作ってくれた鶏スープを食べる。彼はオモニのレシピに沿ってスープを作り、オモニをもてなす。複雑な歴史をもつこの家族の中に、この日本人は一歩一歩溶けこんでいく。
キム・ウィソン 俳優・映画監督
Netflixドラマ『ミスター・サンシャイン』『アルハンブラ宮殿の思い出』)
監督でもある娘が撮影を通して母を理解していくように、この作品を観終わるとほんの少し「あの人たち」と「私たち」の間に引かれた線は、細く、薄くなる。
是枝裕和 映画監督
キム・ユンソク 俳優・映画監督
平松洋子 作家、エッセイスト
一人の女性の人生を通じて、韓国史の忘れられた悲劇を復元した演出力が卓越している。
2021年韓国DMZ国際ドキュメンタリー映画祭·審査評