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  • 人々はヤン ヨンヒについて「自分の家族の話をいつまで煮詰めているのだ。まだ搾り取るつもりか」と後ろ指をさすかもしれません。しかし私ならヤン ヨンヒにこう言います。「これからもさらに煮詰め、搾り取ってください」と。
    彼女の作品たちは、単純に、ある個人についての映画ではありません。普通は対立すると思われる二つのカテゴリーの関係について問い続ける映画です。その目録はとても長い。個人と家族、個人と国家、韓国と北朝鮮、韓国と日本、資本主義と共産主義、島と陸、女と男、母と父、親と子、新世代と旧世代、21世紀と20世紀、感情と思想、そして何よりもスープとイデオロギー。
    ヤン ヨンヒの母親、この老いた女性一人の顔を見つめながら、私たちはこれらすべてについて省察することができます。映画『スープとイデオロギー』は、ヤン ヨンヒのこれまでの作品のように、私たちがいつまでも噛み締めなければいけない思考の種を与えてくれます。ヤン ヨンヒは引き続き煮詰め搾り出し、私たちはこれからも噛み締めなければなりません。

    パク・チャヌク 映画監督

    (『JSA』『オールド・ボーイ』『親切なクムジャさん』『お嬢さん』)
  • この映画は記憶に関する映画でもある。一人の人が持ちつづけた記憶も、持ちきれずにあふれた記憶も歴史になる。歴史は一杯の巨大な器に入ったスープなのかもしれない。
    一人ひとりがその中に溶けているのか、一人ひとりの中にその器があるのか。
    どちらであるにせよ、このスープを大切に飲んで、飲んだことを記憶しよう。

    斎藤真理子 翻訳家

  • オモニ(母)のレシピ通りにつくったあのスープの中には、どんな言葉でも語り尽くせないすべてが込められている。

    ヤン・イクチュン 俳優・映画監督

    (監督・出演『息もできない』、出演『かぞくのくに』『あゝ、荒野』、Netflixドラマ「地獄が呼んでいる」など)
  • 若い日のオモニの話は衝撃でした。 ヤンさんの苦しい涙を見ているうちに、私は「かぞくのくに」の撮影中、日ごとに泣き虫になっていった姿を思い出していました。
    涙はヤンさんをより強くする。
    その涙の後にどんな作品が生まれるのか、心の中で応援しながら待つことにします。
    「家族の笑顔を見たい」。その一心で料理を作り続ける母たちの願いが叶えられる世界でありますように…。

    宮崎美子俳優

  • オモニは少しずつ、「忘れて」いく。押し込めてきたあまりに凄惨な記憶を、誰かと分かち、託していくほどに。
    「もう忘れてもいいよ」と言えるほど、オモニの、人々の背負ってきた歴史を、私は知らなかった。
    そして、「知らなかった」で終わらせたくない。

    安田菜津紀 認定NPO法人Dialogue for People 副代表/フォトジャーナリスト

  • 済州島にはギャンブルをやりに何回も行きました。その地で大虐殺(済州四・三事件)があったことなど露知らず、脂汗を流しながらカードをめくっていた愚か者の自分に天罰あれと思いながら、この映画を観ていました。重いテーマの映画だけど、スープとカオルさんに癒されました。

    末井昭 エッセイスト

  • ヨンヒの作品を観ると、自分の家族について考えてしまう。
    父と母は、旧満州からの引揚者だった。姉と兄は残留孤児になる可能性があった。
    小学3年の時、父と母は離婚し新しい母が来た。
    その育ての母は、ヨンヒのオモニ同様に今は認知症だ。
    どんな家族にも、歴史がある。ドラマがある。日常がある。非日常がある。
    ヨンヒの作品を観ると、自分の家族を思い出す。

    喰始 ワハハ本舗 作・演出家

  • 新しい家族   映画『スープとイデオロギー』は、ヤン ヨンヒ監督の「家族ドキュメンタリー映画3部作」の最終章だ。『ディア・ピョンヤン』『愛しきソナ』で東京・大阪・ピョンヤンに分かれていた家族は、大きな変化を経験する。日本人・荒井カオルの登場である。
    真夏の大阪にスーツを着て、汗をかきながら現れた彼は、オモニ(母)が作ってくれた鶏スープを食べる。彼はオモニのレシピに沿ってスープを作り、オモニをもてなす。複雑な歴史をもつこの家族の中に、この日本人は一歩一歩溶けこんでいく。

    キム・ウィソン 俳優・映画監督

    (映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』、
    Netflixドラマ『ミスター・サンシャイン』『アルハンブラ宮殿の思い出』)
  • 「私たち」のすぐ隣に住み、「私たち」とは違うものを信じて生きている「あの人たち」。彼らがなぜそのように生きているのか、なぜ「私たち」には理解できないものを信じようとしたのか。
    監督でもある娘が撮影を通して母を理解していくように、この作品を観終わるとほんの少し「あの人たち」と「私たち」の間に引かれた線は、細く、薄くなる。

    是枝裕和 映画監督

  • 『ディア・ピョンヤン』『愛しきソナ』『かぞくのくに』   これら宝石のような映画たちを観ながら、私が最も驚かされ気になった人物はオモニ(母)だった。『スープとイデオロギー』は、まさにそのオモニについての物語だ。

    キム・ユンソク 俳優・映画監督

    (監督・出演『未成年』、出演『1987、ある闘いの真実』『チェイサー』など)
  • 『ディア・ピョンヤン』『かぞくのくに』、そして本作。ヤン監督による三作品を束ねる圧倒的な強度。むきだしの母の生の姿を追い、やがて現れる家族の真実に心臓を射貫かれる。

    平松洋子 作家、エッセイスト

  • 在日朝鮮人の家族史を通じて、韓国の現代史を掘り起こした作品。
    一人の女性の人生を通じて、韓国史の忘れられた悲劇を復元した演出力が卓越している。

    2021年韓国DMZ国際ドキュメンタリー映画祭·審査評